書家 忽那海放

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東京学芸大学書道コース合格の吉報

2023年5月10日

この春、東京学芸大学書道コース合格の吉報が、忽那道場に届いた。
合格したのは、高校3年間道場に通ったMさん。彼女が小3の時、私が小学校で書写を教えたのが出会いであった。しばらくは離れていたが、私が退職して書道教室を開くという噂が彼女の耳に入り、高校生になったばかりの彼女が習いに来るようになった。高校では、芸術科目は音楽を選択していたので、何とか3年間で少しでも書の世界を知ってもらえればという思いで稽古が始まった。
九成宮醴泉銘から始まった古典の臨書も、3年間で18種類にも及び、広く浅くではあるが、楽しく書に親しむことができたのではないかと思っていた。

あれは忘れもしない、共通テストを2ヶ月後に控えたある日のこと。
「先生、私は書道教員になりたいのですが、どこの大学に行けばいいですか。」との相談を持ち掛けられた。突然の話に驚いたが、私の長年の夢であった「高校書道教員」の夢を彼女に託せる喜びの方が大きかった。
しばらくして、志望校が東京学芸大学に決まった。国立の難関有名大学である。実技試験のウエイトも高い。彼女からの過去問の情報をもとに対策を練った。それまでの古典の臨書が、漢字創作、漢字仮名交じり文創作、仮名の臨書へと変わった。彼女が訪れるといつも和やかになる道場に緊張感が漂うようになった。
毎回、私が漢字4文字と俳句のお題を出し、設定した時間内に一枚を仕上げるという本番さながらの練習を繰り返した。彼女のよさが最大限発揮できる書風を見つけるのが私の役目であった。
試験日が近づいてくると、道場に通ってくる回数も増え、彼女のやる気がひしひしと伝わってきた。
何としてでも彼女に合格の切符を・・・。私は限られた時間の中でやるべきことはやったという思いで彼女を信じ、天命を待った。

3月6日10時10分、メッセージの着信音とともに、
『合格しました。』
待望の6文字が目に飛び込んできた。
私は、道場で一人喜びに浸った。

3年前に早期退職した私に、まさかこのような一人の人生を変えるような大きな出来事が訪れようなどとは夢にも思っていなかった。私が、予定通りの人生を送っていれば、あと2年は小学校教諭である。
とにかくよき縁に恵まれたことに、ただただ感謝、感謝である。
M さんの前途を祝し、乾杯!!

3年間の臨書の一部

私は、高校3年生になってすぐの頃、医療系の仕事を目指して勉強していましたが、道場で書道をしているときがとても楽しく、自分が進むべき道だと思ったため、書道の道に進むことを決意しました。東京学芸大学を受験すると決めたとき、先生も両親もとても驚いた様子でしたが、私が選んだ進路を全力でサポートしてくれました。
大学入試の一つの分野である実技は、道場で未経験であったかな文字や創作分野も含まれており、不安でいっぱいでした。しかし、一つ一つの分野において、私に合った対策を立てていただき、受験本番までの二ヶ月間で自信をもって挑めるほど成長することができました。

忽那先生と書道をした三年間、特に大学受験前の二ヶ月は、書道の技術だけでなく、書道を通して集中力、忍耐力、そして目標に向かって努力し続けるという力を身につけることができました。実技は他の教科とは違い、模擬などで点を確認したり、成長していることを確信するのも難しい分野です。不安の中、最後まで自分を信じて努力し続けることができたのも、忽那先生の支えがあったからだと思います。
これからは、大学で書道の技術を高めることはもちろん、たくさんの仲間と切磋琢磨し、自分の進路を切り開いていきます。